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原生種、あるいは原生種に近い花たちのお話です

原生種の花たちは、豪華でなくても、小ぶりでも、改良品種には決して見られない鮮烈な美しさに満ちています。
店にあふれる花。それらのほとんどが、改良を重ねられたもの。そこにも深く多彩な花の世界があります。でも、それらの花には必ず元になった原生種があります。 その清々しい姿、形色、香りは、悠久の時間と風土が生みだした、かけがえのない野生の輝きなのです。

 
3.ササユリ  笹百合  
●wild data
花季 5〜6月 原産 日本(本州中部以西、四国、九州) 
ユリ科産地:日本 ユリ科
息を呑む楚々たる美しさと気品

昔、比良山(京都と滋賀の県境)の原生林を見るために登ったとき、立ち寄った小さな寺の庭の片隅に咲いていたユリを見た。
その楚々たるあまりの美しさと、あたりをはらう気品に息を呑んだ。うす紅のそのユリは、花弁をすぼませ、うつむき加減に、50〜60cmほどの細い枝を重た気にしなわせ、5、6本の小さな群となって咲いていた。
お寺のお坊さんに聞いて、ササユリと知り、谷崎潤一郎の「細雪」にでてくるササユリがこの花だとも知った。 

 
西のササユリ、東のヤマユリ
関西と関東いずれにも住んだが、個人の庭でも、花屋の店頭でも寡聞にしてこの花を見たことがない。で、調べてみたところ、元々ヤマユリの分布は本州中部から東北中心(長年の間に近畿に拡大)で、ササユリは本州中部以西。またササユリは球根が腐りやすく火山灰土壌を嫌うため、栽培が難しいと知った。
前回お話したヤマユリもこのササユリも日本原産だが、優雅な西のササユリに対し、ダイナミックな東のヤマユリ。香りはヤマユリは強い芳香で、ササユリは優しい。同じユリながら、風土の違いがこんなにはっきりと姿・形に映し出されるのじかと驚いた。
 
奈良時代から続くササユリの祭リ
この美しいササユリの祭りがある!奈良の率川(いさがわ)神社では、奈良時代から延々と毎年6月17日に三枝祭り(さいぐさまつり、別名ユリ祭り)が行われ、このとき三輪山の山中から集められたササユリが神前に供えられる。
祭りのいわれは、神武天皇が、ササユリが咲き乱れる里で美しい娘に出会ったという、恋伝説にちなんだものとか。ギリシャ神話もそうだが、洋の東西を問わず、花の伝説ってみんな好き。花の美しい沈黙が人の饒舌を誘うのかも。
神社に聞くと、ユリ祭りの日、神前に供えられる数は、昔は3千本!最近少なくなったが、それでも1000〜2000本のササユリが奉納されるという。一度はこの美しい祭りに行ってみたい。
 
参考文献
「花と日本人」(中野進著)「江戸時代の自然」(青木宏一郎著)
「花ことば」(春山行夫)「新日本植物図鑑」(牧野富太郎著)ほか
 
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